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現在も多くのファンを作り、様々な作家に影響を与え、何本も映画化されている永遠のベストセラー作家・太宰治。彼が手がけた幻の名作短編「未帰還の友に」が没後75年を記念して初めて映画化されました。本作は太宰の作品としては珍しくストレートに反戦をテーマにしている点や、何度も取り上げている恋愛や友情を並行して描いている点が特異な原作で、さらに福間監督は当時の風俗として歴史に名を残している新宿ムーランルージュのエピソードを付け加えて、映画としてのオリジナルな物語を作り上げています。出征したまま未だ帰って来ない年少の友の身の上を思い、太宰を思わせる先生が懐かしく、にがく回想し、教え子の切ない恋愛と戦争によってちりぢりになってしまった二人のはかなさが描かれます。
監督は『女生徒・1936』の福間雄三、主人公の先生には大林宜彦作品などで異彩を放つ窪塚俊介、教え子鶴田に土師野隆之介、その他萩原朔美、水島裕子などが脇を固めています。

ストーリー

小説家の先生(窪塚俊介)を慕う学生たち。先生は中でも、鶴田(土師野隆之介)に特別に友情を感じるようになる。そんな中鶴田は出征が決まり、一時先生と酒を交わす時間が取れる。二人の常連の居酒屋の娘・マサ子(清水萌茄)は新宿ムーランルージュの舞台に立っていたが、鶴田との恋は手紙のやりとりで続いていた。だが出征が決まった鶴田は苦しみながらも彼女との別れを決心し、先生にそのことを告げるのだった‥。そして時代は戦争の泥沼の中で、多くの若者たちの犠牲を強いていく。

キャスト & スタッフ

窪塚俊介
先生
1981年11月6日生まれ、神奈川県出身、A型。米・ロサンゼルスのリー・ストラスバーグ演劇学校に留学後、2004年に俳優デビュー。映画「まだまだあぶない刑事」(05年)、映画「BRAVE HEARTS 海猿」(12年)、WOWOW「坂の途中の家」(19年)、映画「海辺の映画館 キネマの玉手箱」(20年)、ドラマ「教場」(20年)、ドラマ「イチケイのカラス」(21年)、ドラマ「シャイロックの子供たち」(22年)等、出演作多数。
土師野隆之介
鶴田
2003年4月19日生まれ、神奈川県出身。TV大河ドラマ『平清盛』牛若丸役、『水戸黄門最終回スペシヤル』など幼い時から雜誌、テレビに出演。映画『ロックわんこの島』(’11/中江功監督)では、300 人を超えるオーディションで主人公の男の子役に抜擢。主な出演作に、映画『呪怨 黒い少女』(’09/安里麻里監督)、『猿ロック』(’10/前田哲監督)、『MONSTERS』(’14/中田秀夫監督)、『最後の命』(’14/松本准平監督)、などがある。2020年、『ロボット修理人のAi(愛)』で、ブータンのドゥルク国際映画祭で最優秀主演男優賞を受賞した。
清水萌茄
マサ子
1999年12月7日生まれ、岩手県出身。2022年 東北大学文学部倫理学専攻 卒業。映画「ありふれた風景」(23年)、舞台「100回目の婚活反省会」、「風邪引きジュエット」(21年)、「前夜」(22年)、「ポップスガールズ~バスケがしたいです編」(23年)、舞台「目にすることなき風景」(23年)に出演。本作では新人ながらにヒロインに大抜擢されるなど、今後の活躍が注目される俳優のひとり。
萩原朔美
井伏鱒二
1946年11月14日東京生まれ。多摩美術大学名誉教授。前橋文学館館長。祖父は詩人萩原朔太郎。母は小説家萩原葉子。1967年、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷立ち上げに参加。俳優、演出家として活動。1972年、山口勝弘、中谷不二子達のビデオひろばに参加。映像作品を制作。1975年、月刊「ビックリハウス」をパルコ出版から創刊。編集長を務める。俳優としての主な出演作品は『書を捨てよ町へ出よう』(1971年・寺山修司監督)『(秘)色情めす市場』(1974年・田中登監督)『天上の花』(2022年・片嶋一貴監督)
福間雄三
監督
1951 年、新潟県生まれ。1967 年、高校時代から8 ミリフイルムで短編映画を作る。作品に『朝・モチーフ・イメージ』67、『荒野』68、『赤い靴』76 などがある。2002 年に映画批評の掲載及び映画の制作・上映を目指し、ウェブサイト「ネット・リュミエール」を開設。映画館の特集上映(深作欣二、黒澤明からゴダールまで)などで観た作品の批評を掲載(約450 本)するなど、約13 年間続ける。その間に、2009 年7 月には、小型HD カメラによる撮影・編集も担当し、映画『遺書』(短編23 分)、ドキュメンタリー映画『私の青空・終戦63』(92 分)などを完成させる。また、2010 年4 月に「幻野映画プロジェクト」を正式に立ち上げ、2012 年に、長編劇映画第一回作品『女生徒・1936』を完成させ、翌年、太宰治・桜桃忌に、東京立川、横浜での2館同時上映を実現させる。
2022 年5 月に幻野映画事務所を設置し、8 月に文化庁の補助金の交付決定を受け、11 月に撮影開始。本作が長編映画の第三作目である。

プロダクションノート

(1)新たな「幻野映画事務所」の立ち上げ

映画『私の青空・終戦63』(09)、『女生徒‣1936』(13)等の作品を監督した福間雄三を中心に、幻野映画プロジェクトを発展的に解消し、ここで新たに、「自由に映画を作る・見せるシステム」を確実に構築し、継続的な映画製作の基盤づくりを図るために、2022年5月に結成され、第1回作品として、太宰治原作『未帰還の友に』の映画化が、企画されました。

(2)なぜ「未帰還の友に」なのか

前作『女生徒‣1936』のプログラムに、福間監督と高校時代からの友人で、今回も音楽を担当してもらっている、原将人が寄稿し、次のように書いているという。

*「太宰治に『未帰還の友に』という、戦争中に、ただただ酒を求めてさまよう自らの姿を戯画化し、未帰還の若い吞み友だちのことを追悼した、反戦小説があって、高らかに反戦を謳ってないところが本当にすばらしくて、福間くんに、いいよ、いいよと絶賛していたら、太宰を撮ることにしたよという。撮ったものを見たら、『女生徒』を中心とした女性一人称で書かれた戦争中の小説をまとめたものだった。…」(映画監督・原將人) このことが、強く、心に残っていると、監督は話す。

(3)

2022年8月中旬、文化庁助成金の交付決定、年内完成試写を目指し、シナリオ作業を本格化する。「2022年という年は、2月24日にロシアのウクライナ侵攻がはじまり、21世紀において、またも、「残虐な戦争」が、始まってしまい、今だに終わりが見えず、最悪な事態に追い込まれている。」(文化庁提出「企画意図」から)

(4)太宰治と新宿ムーラン・ルージュ(伊馬春部)

当初、太宰治原作『未帰還の友に』に、太宰作品「満願」を加えるという企画に変更してあったものを取り止め、監督の友人でもある、田中じゅうこう監督(映画『ムーラン・ルージュの青春』など)の提案で、新宿ムーラン・ルージュの舞台シーンを入れ込み、二人は、初の製作・監督で、タッグを組み、シナリオ・演出にも参加することになる。
新宿ムーラン・ルージュの劇作家としても、著名である伊馬春部は、筆名「太宰治」以前から井伏を介して知遇を得、「津島君」と呼んでいた旧友。「青い花」に参加して互いの文学に理解を深め、太宰は尊敬と信頼の念を抱いていた。*「太宰治三鷹とともに」(三鷹市スポーツと文化財団)参照。

(5)主要キャストなど。

製作・田中が以前から、つながりを持っていた青年座の石井代表にシナリオを届け、窪塚俊介もシナリオを読んだうえで、ぜひ出演したいということだった。役者決定の第1号が、主役ということで、簡単ではないと思っていただけに、監督はじめ、スタッフ一同、大いに喜ぶ。また、現場では、先生と学生たちというチーム力も、核になって、自然体で発揮されていたと、監督は感心する。
主役の次に、大事な役である鶴田康平役が、難航していたが、田中じゅうこう監督作品『ロボット修理人のAi(愛)』の主役を演じた、土師野隆之介が、最後の手だということで、最後の全体リハーサルで決定する。結果的には、この映画『未帰還の友に』の、もう一つの顔になったようです。
さらに、その後、青年座の矢島諒、清水萌茄、君澤透も出演決定し、それぞれの役割を、青年座に担ってもらうことになった。

(6)スタッフの編成

前作の『女生徒・1936』のスタッフでもあり、プロデューサー・櫻井陽一、撮影・根岸憲一を軸に、編成された。結果的には、プロデューサー・櫻井が、確実に、一日欠けることになったため、田中及び監督の、古くからの友人でもある、新藤兼人『午後の遺言状』のプロデューサー・溝上潔の応援を手配する。 *撮影期間は、超過密スケジュールが予測される、11月11日から17日の7日間となった。

(7)撮影地

東京周辺を、勢力的に探す、東京、神奈川、埼玉・・・。

(撮影日ごとに整理)
11月11日 早朝の上野駅、上野駅待合室(北区中央公園文化センター)。
井伏鱒二邸(前川邸・文京区)
11月12日 蒸気機関車、車輪、上野駅ホーム。(三崎口駅近辺)
列車、車内。ブナ林の景色。線路沿いの道。(三崎口駅)
線路沿いの道、月夜・町、煉瓦壁の道(深谷シネマ)
11月13日 太宰治の家、玄関、書斎。(厚木市七沢温泉 復元館*小林多喜二の離れ)
11月14日 井之頭公園、ベンチ、森、高円寺線路沿いの道(薬師池公園・町田)
岩場、ジャングル、練兵場、山岳訓練、兵舎の窓、楽屋
(南足柄市・丸太の森・旧福沢小学校)
11月15日 上野公園・森。(薬師寺公園・町田)
洞窟、密林(長浜横穴墓群)
11月16日 おでん屋 菊屋・表(山十邸・神奈川愛川)
ムーラン・ルージュの客席・舞台(神奈川県立麻溝台高校)
*ムーラン・ルージュの舞台想定撮影が、相模原市の高校の体育館で行われ、撤収が23時となることから、初の宿泊となる。翌日、小田急町田駅集合、愛川町中津での、茶店・座敷の撮影に向かう。
11月17日 おでん屋 菊屋・表(山十邸・神奈川愛川町)

(8)クランクイン

2022年11月11日9時、ロケ地は、北区中央公園文化センター撮影準備。
*早朝、寒い。上野駅構内の待合室で、太宰(窪塚)が、鶴田君(土師野)を待っているという、窪塚さんのシーンからクランクイン。
汽車が遅れて、鶴田君が、仙台から来る。
3時間遅れて、でも会うと、鶴田君は、いきなり仙台なまりで話し始める。
映画では、とても、大切な、二人の会話が始まってしまうというシーンになっている。
鶴田「生活人の強さというのは、ノオと言える勇気ですね。…」につながる。

(9)クランクアップ

この映画のクライマックスともいえる、シーンで、クランアップとなった。
シナリオには、69シーン・「鶴田と太宰」と柱建てされ、そして、黒バック、二人並んで正面を見ている、とある。黒バックという想定は変更され、薄闇を背景に、上野公園の茶店・座敷で、ウイスキーを飲みながら話すシーンの、ある意味のエンディングで、鶴田君と太宰が、強く感情をあらわに、語り合う、熱のこもったシーンになって、テーク3回! 現場も、いい緊張感が走っていました。

皆様、お疲れ様でした!